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COP27:「アフリカ諸国こそSMR」ニュースケールCEO

16 Nov 2022

COP会場内の原子力パビリオンで11月15日、欧州原子力産業協会(Nucleareurope)の主催で、「クリーンなエネルギーミックス」をテーマとするセッションが開催された。モデレーターに有馬純氏(日本原子力産業協会理事、東京大学公共政策大学院・特任教授)を迎え、欧州原子力産業協会のイブ・デバゼイユ事務局長、世界原子力協会(WNA)のサマ・ビルバオ・イ・レオン事務局長、米ニュースケール社のジョン・ホプキンスCEOが登壇し、ネットゼロに向けた原子力技術によるソリューションを議論した。

デバゼイユ氏は「1つのテクノロジーに限定せず、再生可能エネルギーも原子力も、あらゆるエネルギー源を活用すべき」とした上で、「カーボンフリーの電源で脱炭素を目指すべきであり、我々にガスやオイルを使う余地はない」との見方を示した。

レオン氏も「電力だけでなく水素利用や熱利用も見据えるべき」とし、「ネットゼロに向けたトータルなソリューションを提供できるのは原子力だけ」と強調した。また開催地であるアフリカの実情にも言及し「我々のエネルギー移行は『化石燃料からクリーンエネ』への移行だが、アフリカ諸国のエネルギー移行は『エネルギーゼロ』からの移行」だと指摘。目標時期も2030年や2050年ではなく、喫緊であるとし、「プライオリティ、タイムラインが異なることを認識する必要がある」と強調した。

ホプキンス氏は「アフリカ諸国にはSMRが適している」とした上で、「エジプトであれば人口集中エリアに設置し、需要増に応じてモジュールを拡大」、「南アフリカでは発電のみならず海水脱塩利用のニーズもある」との見方を示した。そして「アフリカ諸国は雇用を重視している」と指摘し、「再生可能エネルギーは雇用を生まないが、SMRは30万kWの出力規模であれば、電気技師、配管技師、保守要員、警備要員などそれなりの人員が必要だ。また必要な学位は8つ程度で、うち5つは2年間で取得可能。つまり単なる雇用だけでなく人材スキルの向上も望める」との見方を明らかにした。

また有馬氏が「大型炉と小型炉の棲み分け」について尋ねたのに対し、レオン氏は「多くの報告書が、2050年までに12億kWの原子力発電設備容量が必要だと指摘している。これは毎年5,000万kW以上の新規原子力を運転開始させることであり、大型か小型かではなく、文字通りあらゆる原子炉が必要となる」との認識を示した。一方デバゼイユ氏は「マーケットが決めること」だとしながらも、SMRについて「初期の懐疑的な見方から、今ではより現実味を帯びてきた」とし、「建設のリードタイムが短いことから、喫緊のソリューションとなりうる」と期待を寄せた。

有馬氏は「世界中で多くの先進炉が検討されているが、いずれも現実味を帯びている。ただし導入においては、ファイナンスを引き出すためにも、現実的で確固たるエネルギー政策が不可欠」との見解を示し、セッションを結んだ。

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